エッセイ

君だけの色

メルボルンには使わなくなった倉庫を改装して再利用しているお店がたくさんある。普通の店舗設計よりも天井が高く、奥行きもあるので開放的なスペースとして人気があるのだ。

KRIMPER はそのなかでも選りすぐりの倉庫カフェと言えるだろう。シティの路地裏にあるこのカフェは普通に歩いていると見過ごしてしまうくらいの隠れたカフェなのだ。まさに、私にとって「おひとりさま避難所」である。このカフェにいると落ち着くのだ。そして、読書も進み仕事も捗る。

避難所というだけあって、正直このカフェは紹介したくはなかったのだが。他にも避難所を必要としている人がいるかもしれないという気持ちに負けてしまったのだった。避難所が人で溢れかえってしまったらどうしたものか。そんな不安が頭をよぎるのだが、他にも避難所はあるとあっさり思うのだった。

レンガ作りの壁はいかにも外国っぽく暖かみがある。大きな机にパソコンや資料や本などを置いてしまえば、そこは避難所兼オフィスになってしまうのだ。美味いコーヒーもある。こんな都合のいい話はないだろう。この日もたくさんの「おひとりさま」に遭遇した。もちろん「おふたりさま」もいる。
茶色のレンガと黄色の明かりが本当に目も心も癒してくれるのだ。ここでのデートは何となくいい感じになる予感がする。何かに見守られている気がするから。このカフェにはそんなオーラがあるような気さえする。昼下がりをまったりするのにもいい避難所。時間が止まってくれたらいいのにと思うのは「おひとりさま」専門分野ともいえる現実逃避だ。

古い建物には何かがいたりするものだが、このカフェにはそんな気をまったく感じない。人をポジティブにさせるオーラと人を介抱するというぬくもりがここにはあるのだ。そして、この内装といいこのカフェを一言で言ってしまうならば 「That’s Melbourne」だろう。古い建物をただ新しくしてしまうのではなくて、古い建物に新しい物を融合させてしまうという考え方。メルボルン独特のものなのかもしれない。そして、もちろんいちばん大切なことはコーヒーも美味いということ。

メルボルンは個性のある人が多い。外を歩いていてすれ違う人たちは、みんな違う格好をしている。そして、それが突拍子もないものであっても気にせず堂々としているのだ。何故なら、自分がやりたいことだから。自分がしたいことだから。

他人の目はどうでもいいのだ、自分の目が大事なのだ。

私もそのひとりなのかもしれない。人と違う髪型をしてみたり、誰もがしないような色に染めてみたり。周りからしてみれば、年甲斐もなくだとか思われるかもしれない。でも、そんな意見はどうでもいいのだ。私には私の「個」というものがある。そういうたくさんの「個」が集まってこの街はできているのだ。
「That’s Melbourne」 そんな街で自分という個性に包まれて私は生きている。

大昔、自分を探しにやってきた場所で私は見事に自分と出逢うことができたのだ。日本にいた頃は、白黒の世界だったに違いない。自分の色さえも持たずにただひたすら人と同じようなことをしていたような気がする。

あの頃は、自分の色が何色なのかさえもわからなかった。

自分の色を持つ。
どこに行っても誰と会っても決して変わらない色。
自分だけの色。

君には色があるかい?
君には自分の色が見えているかい?

個性とは自分で作り出すものであって、決して人に作られるものではないということ。

もし、今君のいる世界が白黒だとしたら
その色を変えればいい。
そして、それを変えるのは君だということ。

 

さあ、用意はいいかい?
今から、君の旅が始まる。

 

色のある世界は君が来るのをを待っているよ。

 

ここはきっと君の場所になる。

 

旅はいつでも始められる。
そして、旅はどこからでも始められる。

 

いつどこから旅を始めて、どこに向かうのか。
それを決めるのは、君しかいないということ。

 

そして、その旅のチケットは君自身だということ。

 

旅に出よう。
君だけの色を求めて。

 

 

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